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著者:

Padma Venkatraman(パトマ・ヴェンカトラマン)

 

翻訳:小梨直

 

原題:階段をのぼって


著者Padma Venkatraman
(パトマ・ヴェンカトラマン)について

1969年南インド・チェンナイ生まれ
本書が作家デビュー



 父方の祖父が法学者、母が弁護士というハイソな家庭に育つ。19歳で渡米し、ウィリアム・アンド・メアリー大学で海洋学を。作家になる前は、ドイツのキール大学海洋研究所や米国のジョンズ・ホプキンス大学に勤め、アンダマン・ニコバル諸島で実地調査を行うなど研究生活を送っていた。今はロードアイランド州在住で、大学でパートをしながら、執筆活動を行う。
デビュー作『図書室からはじまる愛』は、2009年にボストン作家協会賞受賞、全米図書館協会「ヤングアダルトのためのベストブックス」に選出された。




 話は1941年8月、第二次大戦中の、まだイギリスの植民地であったインドのボンベイに始まる。主人公は天真爛漫で好奇心いっぱいの15歳の少女ヴィドヤ。ヴィドヤの家族はカースト制の最上位である「ブラーフマン」であり、18歳の大学生の兄キッタと、母(アッマー)と、診療所を経営する医師でもある父(アッパー)の3人。リベラルな父は、イギリスのインド統治の荒っぽいやり方に疑問をもっていた。インドの機織りたちの手首を切り落とし、インドの産業や伝統工芸を廃れさせたイギリスに抵抗を示すために、父はインドの手織り綿のクルターを着ていた。アッマーに言われたようにヴィドヤクリシュナ生誕祭の準備をしていたとき、アッパーは錆色の奇妙な汚れをそのクルターにつけて帰宅した。
 当時のインドは、ガンジーを中心に「非暴力・非服従の独立運動」真っただ中。ヴィドヤの父は、その非暴力抵抗運動に加わる一方、カーストによる身分制度に反対するという進歩的な考え方の持ち主。そのため本来は大家族で暮らし、男女は離れた階に住むのが普通だったが、ヴィドヤは核家族で自由奔放に育った。15歳と言えば当時のインドでは、学業の途中であっても縁談が持ち上がる年齢。しかし、彼女は結婚よりも大学に行きたいと願っていた。なにより自由がほしかったのだ。そんな彼女の気持ちを、アッパーは知っていた。

 
アッパーの思想は、戦争の本を読む兄に対する態度でもわかる。
「なぜキッタに戦争の本なんか読ませるの?非暴力で貫くべきだって、いつも言っているくせに・・・」と抗議するヴィドヤにアッパーは淡々と話す。
「・・・家の中で検閲でもするか?」
「もちろん人の自由を奪うべきではないと思うけれど・・・」・・・

「ヒンドゥーにも善悪の別はあるんじゃないの?」
「なかには、ユガ・ダルマ-なにが正しいかは時と場所と状況による、という考え方を説いた書物もある」・・・

「ほかの人間の考え方をどうこういう権利はないんじゃないかな。たとえ相手が自分の息子でも」
すばらしいね~
「掟として一冊の書物にまとめて、それですむ問題だろうか。慈悲深い心はどれも同じひとつの神の化身、アバァターだ、わたしたちにとっては」
ヒンドゥー教に対して全くなにも知らなかったわたしには新鮮な驚き。
このアッパーの思想すごくいいなって思う。

こんな調子で語っていては、一体いつ愛が生まれる図書館にたどり着くのかな・・・。
とりあえず本を図書室に返さなければならないので記録を・・・