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原著:Gloria Whelan(グロリア ウィーラン)   
翻訳:代田 亜香子


いったいいつこの本を借りたのだろう
もう一ヶ月は抱えている

著者のグロリア ウィーランさんは
1923年生まれの詩人
アメリカミシガン州のデトロイトで生まれ
若い読者のための小説も数多く書いている

「Once On The Island」でグレート・レイクス・ブック賞
この「Home Less Bird」で全米図書賞を受賞


13歳のインドの少女コリーは
貧しいながらもあたたかい家庭で育った

しかし兄たちは学校へ通わせてもらえたが
コリーは行かせてもらえなかった

マー(母)はいった
教科書代や授業料をはらうくらいなら
持参金にとっておいたほうがいいと

兄のラムはいった
女の子は字が読めるようになると
髪の毛がぬけて、より目になって
男に相手にされなくなると

本を読まないコリーは代々のマーのように
考えたことも夢見たことも
ぜんぶ図柄に表現して刺繍した

娘は13歳になれば大人と見なされて
持参金をつけてお嫁に行きそこで家庭をもつ
もう生まれた家にはもどれない

コリーは嫁入り道具にするつもりのキルトに刺繍をはじめた
緑のサリーを来ているマー(母)
自転車で市場に出かけて代書の仕事をしているバープ(父)
古い毛布でこしらえたボールでサッカーしている兄さんたち
庭のまん中のタマリンドの木
その木かげにいるうちの牛
庭に立つコリーの姿・・・
なにもかもを図柄にして
ひと針ひと針おわかれを惜しむように刺繍した

しかしコリーの結婚は悲惨だった
相手の家がほしかったのは嫁ではなく
嫁の持ってくる持参金だけ

そこには病気の息子ハリを
バラナシに連れてゆきさせすれば
ガンジス川の癒しの力でなおるのでは
という姑サスの執念があった

新型の結核菌におかされているハリは
コリーをどうしてもバラナシに連れて行くと
家族にわがままをいった
ハリはガンジス川に入った夜
咳がひどくなって亡くなった

遺体を布で包みマリーゴールドの花環を飾った
ガンジス川までの道
「ラーマ・ナマ・サティヤ・ハイ」をくりかえし歌った
「ラーマの名は真実なり」という意味の

ある日亡くなった夫ハリの遺品の中に
一冊の本をみつけた
学校の先生をしている舅のサッサーに話すと
仕事が終わった夜に
読み書きを教えてあげようと言ってくれた
コリーは一所懸命勉強した

サッサーが生き生きしているのは
本を読んでいるときだけ
コリーが本を読めるようになると
サッサーはラビンドラナート・タゴールの詩集を出した
りっぱな皮の表紙、金文字のタイトル
色紙の中表紙、そしてタゴールの自筆のサイン
「わたしのバープがサインしてもらったんだよ」
「タゴールの詩集は代々うけつぐはずだったのだが・・・」
とサッサーはため息を・・・
コリーは一番気に入っている
家のない鳥の詩を読んであげる

しかしある日サスに
ふたりで本を読んでいるところを見つかった

たった13歳で未亡人になったコリーは
姑にさんざんいじめられた
あんまりつらくなるとここから逃げようかと思った
家からもってきた唯一の銀のイアリングを売って・・・

しかし・・・
花嫁用のサリーは妹のシャンドラの嫁入り用に
しかも自分宛の未亡人年金が勝手に取り上げられ
シャンドラの持参金になっていたことを知る

未亡人用のサリーを持っているだけのコリー
唯一の話相手シャンドラが嫁に行き
サッサーも亡くなりサスとふたりだけに

サッサーの給料も入らなくなり
未亡人年金では食べるものも満足に買えず
サスはタゴールの詩集を売ろうとした

コリーは耐えきれなくなって
まさかの日のために大切に隠してあった
銀のイアリングを思わず詩集と引き替えにサスに
コリーの最後の希望は消えた

何もかも失ったコリーは
気がついたらサスに置き去りにされていた

 

捨てられたのだ
見知らぬ未亡人の街に

それからのコリーは路上で眠り
施しを受ける状況に

しかし人を恨むことなく
自己と向き合い真剣に生きるコリー

こんなつらいお話だけれど
読み終わって心の中にあたたかいものが残った
インドの作家ならどう書くのだろうか・・

 

 

私が願うのは、危険からのがれるのではなく、
危険のさ中で恐れないことです

悲しみのどん底で慰めてもらうことではなく、 
悲しみを克服し、勝利をうたうことなのです

逃げ場がなくなった時も
勇気を失わないで下さい

世間的にも大失敗し、挫折の連続にあっている時も
そのことが、とりかえしのつかないものだと
考えない恵みを頂きたいのです

あなたが来て私を救って下さる 
これを私は願っていません
私が願うのは、のり超えていく力なのです

あなたは、私の荷を軽くしたり、
慰めて下さらなくていいのです
ただ、私が重荷を担うその力をお与え下さい

喜びの日に謙虚に頭をたれ、
私はあなたを思い、あなたの存在を認めます

暗い悲しい夜、失意以外なんにもない夜にも
けっしてあなたを疑いませんように

           ラビンドラナール タゴール