秘密の道をぬけて

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著者:Roni Schotter( ロニー ショッター)
翻訳:千葉 茂樹
イラスト:中村 悦子


「遺失物  今月2日、奴隷が逃亡。黒人の男アイザック、その妻エレン。……略……ふたりはハンナというむすめと、ガールという名の赤ん坊をつれている。所有者は警告する。所有者の正当な財産である奴隷を雇ったりかくまったりすることは、法によりきびしく禁じられている。所有者は、この奴隷を生きたままとらえ、引きわたす者に、ひとりあたり20ドル、計80ドルの賞金をはらうものとする。
  1850年11月5日
      ノース・カロライナ州ウェイク郡エドミントン
      フランクリン・ウィリアムズ        」

この逃亡している黒人一家が
10歳の主人公の女の子白人のアマンダの家に
深夜、馬車の荷台の麻袋の中に隠れてやってきた

人間が遺失物とは!
そんな時代があった・・・
それはもう過去のことであってほしい
しかし差別の問題は今も陰険な形で残っている


この物語はノース・カロライナ州から
バージニア州、ペンシルバニア州を超え
遠く北に離れたニューヨーク州

ペンシルバニア州やニューヨーク州など
奴隷制度に反対する自由州も、
この1850年に制定された新たな逃亡奴隷法により
取締りが行われ、捕らえられると送り返されてしまう

安全な自由の土地はアメリカ国内にはなくなっていた
残された道は、カナダまで亡命することしか残されていなかった
そんな時代の物語

その状況下
「地下鉄道」という逃亡奴隷の手助けをする
秘密組織の駅長としてアマンダの両親は活動していた

しかし、アマンダはなにも知らなかった
逃亡奴隷の話は噂で聞いていただけで
物語の遠い世界のことのように思って過ごしていた

「地下鉄道」の「駅」とは、逃亡奴隷の休息場所
「駅長」はその休息場所を提供する役割
「車掌」は、駅から駅まで無事に送り届ける役目

逃亡の手助けをした者には
6ヶ月の禁固刑と罰金千ドルにもかかわらず
無償の役目を果たしていた

この駅(アマンダの家)でのアマンダの勇気ある活躍や
黒人一家の娘でアマンダと同い年のハンナとの交流
等を中心に据えながら
最後は秘密のトンネルを抜け
次の車掌に送り届けるまでの短期間の出来事を
アマンダの視点で描かれている

黒人問題を扱った物語としては
読みやすいと思う
多くの児童文学者に

評価されているのだろう